ラットITC細胞の生理学的な同定及び下辺縁皮質による応答

今回紹介する論文はこちらです。

Physiological identification and infralimbic responsiveness of rat intervalated amygdala neurons.
Alon Amir, Taiju Amano, and Denis Pare.
J Neurophysiol 105: 3054-3066,2011.

Fear extinctionに対して扁桃体のITC細胞が重要な役割を持つということが知られていますが、この論文では様々な手法を用いて、ITC内の各領域の電気的性質、投射関係などに着目して実験を行っています。

結果
(① ITCを背側に近いITCd、腹側に近いITCv、領域が最も大きいITCmに分けた。(対比染色またはμ受容 体の免疫活性の分布によって。)(Fig.1))
② ITCdとITCvの電気的性質に違いはないが、ITCdはCeL、ASt、他のITC細胞集団に投射するのに対して、ITCvはCeMに投射する。(vitroパッチクランプ法での記録時にトレーサーとしてneurobiotinを導入。)(Fig.2,3)
③ ILに電気刺激を与えると、BLでは逆行性、ITCでは順行性のスパイクが見られた。また、BSに電気刺激を与えると、Ceでは逆行性のスパイクが見られた。(juxtacellular recording法)(Fig.4,5)

ITC細胞を細かい領域に分け、それぞれの投射先が異なるという結果は今までに猫やモルモットでは示されていましたが、この論文の結果②ではじめてラットについても同じことが言えました。(CeがBLに対して、ラットでは内側だが、猫とモルモットでは背側なため、各領域の脳内位置が異なるという点はありますが。)
また結果③では、CeがIL、BS刺激に対する応答が異なることを利用して、始めはCeを狙って、ILとBS刺激による応答を見ながら少しずつ記録用のマイクロピペットをBL側に動かしていけば、応答が変わる境目がITC細胞であると同定できるとしています。(Fig.6)IL→ITC、BL→ILという投射関係が確認されたことも今までの文献と一致しています。

ITCを細かく分けた領域が異なる領域に投射していることは興味深かったですが、猫やモルモットを対象とした実験が2000年代前半までになされていたのに、なぜラットで証明するまでに10年近くも時間がかかったのか不思議です。

よろしくお願いします。



てっしー。