TRPチャネルを介した湿度の知覚

Drosophila hygrosensation requires the TRP channels water witch and nanchung.
Liu L, Li Y, Wang R, Yin C, Dong Q, Hing H, Kim C, Welsh MJ.
Nature. 2007 Nov 8;450(7167):294-8.

ハエ。湿度を感じる機構はあまり理解が進んでおらず、この論文以外ではゴキブリ、線虫でその機構が発見されている。前報により、湿度の知覚に機械感覚が関与していることが示唆されているため、transient receptor potential (TRP) とdegenerin/epithelial Na+ channel (DEG/ENaC) ファミリーに着目し、スクリーニングをおこなった。
・行動によるスクリーニング(湿度~100%と湿度~0%のチューブを提示した場合、通常12-30%のハエが湿ったチューブに移動。)の結果、TRPチャネルであるnanchungとwater witchを同定。ハエの触覚においてnanchung、water witch発現ニューロンが存在(Fig. 1)。このニューロンの抑制により、湿度への指向性が変化(Fig. 2)。
・乾燥した空気、または湿った空気に対する触覚ニューロンの応答性を記録。ドミナントネガティブまたはRNAiでnanchungの機能を抑制すると乾燥した空気への応答性が減弱。一方で、water witchの機能を抑制すると湿った空気への応答性が減弱(Fig. 3)。
・nanchung、water witch発現ニューロンは中枢神経系へと投射を送っており(Fig. 4)、そこから行動などの変化を引き起こすと考えられる。
以上の結果から、ハエの触覚に存在するTRPチャネルの1つであるnanchungが乾燥した空気を、water witchが湿った空気を知覚し、中枢へと情報を伝える。
湿度の知覚には温度知覚経路の関与も示唆されており(Russell et al., 2014, PNAS)、湿度と温度知覚の関係が気化熱以外の観点からも説明できるのか、興味をそそられます。
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