外側扁桃体において学習によりシナプスの構造変化が生じる事を示した

外側扁桃体において学習によりシナプスの構造変化が生じる事を示した論文です。

こちらの論文を紹介します。
Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 May 18;107(20):9418-23. Epub 2010 May 3.
Fear and safety learning differentially affect synapse size and dendritic translation in the lateral amygdala.
Ostroff LE, Cain CK, Bedont J, Monfils MH, Ledoux JE.
Source
Center for Neural Science, New York University, New York, NY 10003, USA. lostroff@nyu.edu

・外側扁桃体シナプスサイズは学習により双方向に変化する。
・ spine apparatus(滑面小胞がスパイン内の大部分を占めている事)はシナプスの調節の中心的な役割を持つ。

Fig1:FCとCIトレーニングをした結果を示しています。CIとはconditional inhibitionの略で、今回は音と電気ショックを与えているのですが、CIでは二つの刺激をずらしています。CIでは音とペアリングしていないので、音ではフリージングが生じません。

Fig2:滑面小胞体の無いもの(sER-free)、有るがspine apparatusを形成していないもの(sER)、spine apparatus(SA)の三種類に分類して、シナプス後密度(PSD)を比較しています。SAが優位に密度が高いこと、SAとPSDの表面積が相関するという事を示しています。SAではないsERでは相関しません。

Fig3:FC、CI、コントロール郡とスパインサイズの比較をしていて、SAではCIによりPSDの減少、頭部サイズの減少が分かります。これは学習によりシナプスサイズが双方向に変化する事を示しています。

Fig4:スパイン内でのポリリボソームの比較をしていて、FCによりポリリボソームの量が増加する事が判明しました。またSAとポリリボソームはFC、コントロール郡においてPSDを増加させる事、sER-freeだとポリリボソームによりPSDが増加することがわかりました。

Fig5:樹状突起上でのタンパク合成と分解を調べています。シャフトとスパイン内にあるポリリボソームの量は全ての試験で相関する事、FCとCI郡においてはシャフトポリリボソームとSAスパインが相関する事を示しています。
 これまでシナプスの変化やスパインの形態変化は薬理投与などで調べられていましたが、今回の論文ではFCとCIを用いて学習を関与させた状態でのスパイン変化、シナプス強度の変化を示した事が新しいことだと思います。
 
 タンパク合成を通してシナプスの安定化が生じ、記憶形成が行われるとする説のひとつのサポートになる論文だと思いました。
岩田浩一