海馬なしに文脈的恐怖条件づけは成立するのか。

The Journal of Neuroscience, May 17, 2006 • 26(20):5484 –5491
Context Fear Learning in the Absence of the Hippocampus
Brian J. Wiltgen,1 Matthew J. Sanders,1 Stephan G. Anagnostaras,2 Jennifer R. Sage,2 and Michael S. Fanselow1

本論文は、海馬をlesionしたラットは文脈的恐怖条件づけを学習することが出来るのか、というシンプルな内容である。

文脈的恐怖条件づけは海馬依存な学習であるため、海馬をlesionすれば学習は不可能であるように思える。ところが実際、lesionする範囲やタイミングの違い(学習前か後か)によるものなのか、それぞれ矛盾する知見が存在する。

そこで今回筆者等は、学習前に海馬をlesionし(fig.1 or 6)、文脈的恐怖条件づけを行った。
その結果、shockの回数を複数回(3回)にすると、海馬がなくてもcontrolと同等に学習が成立することが分かった(fig.3)。
一方、学習後に海馬をlesionすると記憶障害をもたらすことがわかった(fig.7)。

以上より表題の結論としては、海馬なしに文脈的恐怖条件づけは成立することがある、といえる。しかしながら、学習成立には強い刺激(3回のshock)を必要とすること、逆行性の記憶には影響することから、文脈的恐怖条件づけに海馬は重要な役割を果たすという過去の知見を覆すものではない。代償機構がはたらくには特定の条件を必要とするということであろう。

Pちゃんですた。次回はこの続きを載せるよー。