カンナビノイドによるワーキングメモリ障害のメカニズム

四年生のみなさん、卒研お疲れさまでした。まだまだひとつのステップでしかないので、これからも頑張ってください。さて、今回ご紹介するのはこちら。
Acute Cannabinoids Impair Working Memory through Astroglial CB(1) Receptor Modulation of Hippocampal LTD. Han J, Kesner P, Metna-Laurent M, Duan T, Xu L, Georges F, Koehl M, Abrous DN, Mendizabal-Zubiaga J, Grandes P, Liu Q, Bai G, Wang W, Xiong L, Ren W, Marsicano G, Zhang X. Cell. 2012 Mar 2;148(5):1039-50.


カンナビノイドは鎮痛や吐き気の抑制などを目的として様々な治療に用いられていますが、その副作用としてワーキングメモリの障害が起こることが知られています。しかし、そのメカニズムは明らかとなっていません。筆者らは、空間的ワーキングメモリに対するカンナビノイドの影響のメカニズムについて、in vivo電気生理で迫りました。

まず、ラットへのカンナビノイド(HU210 or THC)の腹腔内投与によって、in vivoでCA3-CA1においてLTDが起こることを確認しています(Fig1)。このLTDを筆者らはCB-LTDと呼んでいます。

CB-LTDは、皮質と海馬のグルタミン酸性principal neuronにCB1受容体を欠く遺伝子改変マウス、およびGABA性ニューロンにCB1受容体を欠く遺伝子改変マウスにおいては、wild typeと同様に誘導されます。しかし、アストロサイトのCB1受容体を欠くコンディショナルKOマウス(GFAP-CB1R-KO)では誘導されません(Fig2)。

このCB-LTDは、NR2Bを含むNMDAR依存(Fig3)、およびAMPARエンドサイトーシス依存(Fig4)です。

空間的ワーキングメモリは、wild typeのマウスでHU210によって障害されますが、GFAP-CB1R-KOではHU210によって障害されません。また、HU210によるワーキングメモリの障害は、NMDAR、AMPAR依存です(Fig5, 6)。

これらの結果をまとめた模式図がFig7です。本研究によってカンナビノイドによる空間的ワーキングメモリの障害には、アストロサイトのCB1受容体の活性化、NR2Bを含んだNMDARの活性化、AMPARのエンドサイトーシス、が関わっていることが明らかとなりました。


アストロをはじめ、グリアは本当にいろんなことをしていますね。ニューロンだけで物事を考えるのは注意が必要なのかもしれません。

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