自由行動下ラットからのBLA細胞外コルチコステロン濃度の測定

Quantification of extracellular levels of corticosterone in the basolateral amygdaloid complex of freely-moving rats: A dialysis study of circadian variation and stress-induced modulation
Gaëlle Bouchez et al. Brain Research, 2012 Jan 7

これまで、動物個体内でのコルチコステロン濃度を測定する場合、測定対象としては主に血漿中のコルチコステロンが用いられてきましたが、今回筆者らはin vivoマイクロダイアリシス法を用いることで、BLAにおけるコルチコステロンの細胞外濃度を自由行動下のラットから測定することを可能にしました。
以下結果です。
図1:マイクロダイアリシスプローブの挿入位置とコルチコステロンのキャリブレーションカーブ。検出限界は16 pg/mLであった。
図2:測定のvaridityを検証するためコルチコステロン(2.5 mg/kg, 10.0 mg/kg, 40 mg/kg)を腹腔内投与して、濃度依存的なBLA細胞外コルチコステロンの濃度上昇を確認した。腹腔内投与から約20分でBLA細胞外コルチコステロン濃度はピークに達した。
図3:自由行動下ラットよりBLA細胞外コルチコステロン濃度の概日周期を調べた。18:00〜24:00付近でコルチコステロン濃度はピークに達した。
図4:不安を惹起することが知られているFG7142、ヨヒンビンを腹腔内投与したところ、BLA細胞外コルチコステロン濃度は上昇し、約2時間でピークに達し、濃度上昇は3時間以上続いた。また、15分間の強制水泳ストレスを与えたところ、約1時間でコルチコステロン濃度が上昇したが、濃度上昇は3時間程度で回復した。以上の濃度上昇は副腎除去ラットではみられなかった。
図5:強制水泳ストレスによるコルチコステロン濃度上昇はCRF1受容体アンタゴニスト(CP154,526)とV1b受容体アンタゴニスト(SSR149,415)の共処置(i.p.)によって抑制されたが、どちらも単独では抑制作用を示さなかった。
図6:強制水泳ストレスを与えた後、BLA細胞外ドパミンノルアドレナリンセロトニン、GABA濃度を測定した。ドパミンノルアドレナリンの濃度上昇がみられた。この濃度上昇はCRF1受容体アンタゴニスト(CP154,526)とV1b受容体アンタゴニスト(SSR149,415)の共処置(i.p.)によって抑制されなかった。また、副腎除去ラットにおいても濃度上昇はみられた。

今回用いられた手法により、コルチコステロンが各脳部位に与える影響とそのタイムコースについて、より詳細な検討が可能となりました。慢性ストレスを与えた個体への適用など、今後のさまざまな応用が期待されます。

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