恐怖条件づけと消失はスパインの再構築に逆の影響を与える

今回紹介するのはこちら。


Opposite effects of fear conditioning and extinction on dendritic spine remodelling
Cora Sau Wan Lai, Thomas F. Franke & Wen-Biao Gan
Nature (2012) doi:10.1038/nature10792
Opposite effects of fear conditioning and extinction on dendritic spine remodelling | Nature


筆者らは、恐怖条件づけと消失、再学習によって、神経回路がどのように変化するかを調べた。
用いているのは、マウスの音恐怖条件づけ。着目した脳領域は、前頭連合皮質。
特定の樹状突起スパインをin vivo で経時的に観察している。スパインの形成と除去、そして、それらの位置関係を解析している。


【結果】
・条件づけにより、スパインの除去が上昇する (Fig. 1)
・消失により、スパインの形成が促進する (Fig. 2)
・条件づけ時に除去されたスパインの近傍に、消失によってスパインが形成される (Fig. 3, 4)
・再条件づけにより、消失時に形成されたスパインが除去される (Fig. 5)


以上より、条件づけと消失は、個々のスパインレベルで逆の変化を導くことが明らかになった。つまり、消失によって恐怖の発現に関与する回路の一部が erase されると考えられる!


【感想】
Letter なので詳しいdiscussionはなかったのですが、条件づけで“除去”が上昇し、消失で“形成”が促進する、というのは、どう解釈すればいいのか、興味深いところだと思います。
スパインの形成と除去は、行動とも相関があり (Fig. 1, 2)、前頭連合皮質のこの神経細胞は、恐怖をどのように制御しているのか、、、気になります。


また、こちらの論文も同様の手法を用いています。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
Repetitive motor learning induces coordinated formation of clustered dendritic spines in vivo
Min Fu, Xinzhu Yu, Ju Lu & Yi Zuo
Nature 483, 92–95 (01 March 2012) doi:10.1038/nature10844
Repetitive motor learning induces coordinated formation of clustered dendritic spines in vivo | Nature


以上です。
Qoo