ストレスによるうつ様行動や新生阻害をレプチンが元に戻す

Leptin restores adult hippocampal neurogenesis in a chronic unpredictable stress model of depression and reverses glucocorticoid-induced inhibition of GSK-3β/β-catenin signaling.
Garza JC, Guo M, Zhang W, Lu XY.

Mol Psychiatry. 2011 Dec 20


レプチンといえば食欲を抑制するホルモンとして有名ですが、海馬にも受容体が存在することが知られており、気分の調節などにも関与していると考えられています。近年、動物モデルでストレスにより血漿レプチンが低下したり、レプチンがベースで海馬の神経新生を促進し抗うつ作用をあらわしたりすることが報告されています。
今回は、ストレスによるうつ様行動や神経新生への影響をレプチンが元に戻すかに焦点があてられています。

結果

(ラット)
・慢性予測不可ストレスにより生じる不安様行動にはレプチンは影響を与えないが、うつ様行動(スクロース選択性、強制水泳)はコントロールレベルまで戻す。
・ストレスにより生じる歯状回でのproliferation、survivalの抑制をともにレプチンが回復する。
・レプチンによる抗うつ作用(強制水泳)は事前のX線照射による新生阻害によりみられなくなる。

・DEX(GRアゴニスト)による歯状回の新生阻害をレプチンが抑制(vitro)。
・海馬で、リン酸されることでGSK-3β活性をあげることがしられているSer9をDEXがリン酸化し、レプチンは脱リン酸化する。また、リン酸化することでGSK-3β活性を抑制することが知られているTyr216をDEXが脱リン酸化し、レプチンはリン酸化する。
activeGSK-3βがβカテニンを分解するという知見と一致して、βカテニンの発現量がDEX処置により減少しレプチン処置で増加する(vitro)。

βカテニンがprolifelationに重要であると言われていることから、GRの下流とレプチンレセプターの下流とでβカテニンの活性が調節され、神経新生を通してうつ様行動が調節されると考察


直接結びつけたわけではありませんが、行動レベル、分子レベルでレプチンとストレス(DEX)が拮抗しているところが興味深いです。
ヒトのうつ病でも、肥満と結びつけられるようなうつ病では、レプチンの異常がうつ状態の発症にとって重要な位置にいるのかもしれません。

ヅカ