うつ様行動における海馬テロメラーゼの働き

こんにちは。
明日は初の口頭発表で緊張しています。ひろ○です。
今日はこちらの論文を紹介します。

Hippocampal Telomerase Is Involved in the Modulation of Depressive Behaviors
Qi-Gang Zhou et. al., Journal of Neuroscience, August 24, 2011

うつ病患者の死後脳において、海馬テロメラーゼが減少していることが報告されています。そしてテロメラーゼがDGでのneurogenesisに深く関与することから、テロメラーゼ減少の病態への関与が考えられています。本研究ではテロメラーゼの阻害実験や強制発現実験を行い、テロメラーゼのneurogenesis及びうつ様行動における重要性を検証しています。

主な結果のまとめ
・Chronic Mild Stress (CMS) →海馬のテロメア量が減少、テロメラーゼ活性低下。なお、テロメラーゼは神経前駆細胞で多く発現していました。
・DGでテロメラーゼを強制発現→うつ様行動が減弱(強制水泳、スクロース選択性)。
・テロメラーゼ阻害剤(AZT)を海馬内投与→うつ様行動が増強、DGでのneurogenesisが減少。
以上の結果から、AZTのうつ様行動促進作用はneurogenesisの減少を介している可能性が考えられます。
つまり、
CMS→海馬のテロメラーゼ活性が低下→DGのneurogenesisが低下⇒うつ様行動
であるかもしれません。(かなり怪しいですが)

本論文を読んで、テロメラーゼ活性上昇がなぜ抗うつ作用を持つのか疑問に思いました。テロメラーゼを強制発現してもneurogenesisが促進されるわけではありません。
慢性ストレスは海馬での神経毒性を高める事で、その可塑性を低下させると考えられています。ひょっとするとテロメラーゼがneurogenesisとは別に持つ機能(神経細胞の保護作用など)が抗うつ作用に寄与しているのかもしれないと思いました。
ひろ○