扁桃体と眼窩前頭皮質( OFC )における学習変化の時間的違い

天高く馬肥ゆる季節となりました。Pちゃんも冬に向けてどんどん肥えていきますよ!!

Different Time Courses for Learning-RelatedChanges in Amygdala and Orbitofrontal Cortex
Sara E. Morrison, Alexandre Saez,1 Brian Lau, and C. Daniel Salzman


扁桃体とOFCは、連合学習の逆転学習(二種類のcue (今回は新規な画像) に対してそれぞれ報酬と嫌悪刺激 (今回は飲み物とエアパフ) が与えられる連合学習をした後、cueと結果が前触れもなく逆転するtask)に関与すると考えられてきました。しかし最近の理論は、扁桃体における逆転学習がOFCの指図を受けるかどうかに対して、否定的です。そこで本論文では、サルに対して逆転学習を行うことにより、それぞれの脳部位がどのように学習に関与するのか、電気生理学的に評価しています。


まずマルチ記録から、扁桃体では嫌悪刺激によって活性化する細胞(negative-cell)の割合が高く、OFCでは報酬によって活性化する細胞 (positive-cell)の割合が高いことがわかります。(Fig.2,3)
また、嫌悪→報酬への逆転にはOFCのpositive-cellのほうがより早く大きくその変化に応答し、報酬→嫌悪への逆転では扁桃体のnegative-cellのほうがより早く大きくその変化に応答します。更に逆転学習による上記それぞれの変化は、cueに対する行動の変化とも呼応しており、しかも神経変化の方が行動変化より先行していることがわかります。(Fig.4,5,6,7,8)
最後にLFPs記録から、ほとんどのトライアルを通して、逆転学習後はOFC →扁桃体方向のLFPの方が扁桃体→OFC方向よりも有意に大きいことがわかります。(Fig.9)


以上のことから、OFCが報酬に対する、扁桃体が嫌悪に対する学習に深く関わることが示唆されます。しかし、報酬または嫌悪のcueおよび刺激に応答する細胞は、その逆の刺激に対しても応答することが多いです。また、扁桃体およびOFCの両者に対して、不均一な様式で影響を与える第三の脳部位の存在も、否定することができません。おそらく一様の構造で方向付けがなされるのではなく、もっと複雑な機構で扁桃体とOFCは影響し合っているのではないかと考えられます。


positive‐cell、negative-cellの変化が行動の変化とリンクした結果が興味深いと感じました。一見、OFCが報酬を扁桃体が嫌悪を担当しているのだ、と理解すると易しい気がしますが、現実はそんなに単純ではないようですね。