GAD65の欠損は cued fear の extinction を障害するが contextual fear の extinction は障害しない

みなさん明けましておめでとうございます…という時期ももう過ぎましたね。今回は私にしては珍しくJNSにしてみました。JNS を読みづらいと思っているのは私だけでしょうか??

Deficiency of the 65 kDa isoform of glutamic acid decarboxylase impairs extinction of cued but not contextual fear memory. Sangha S, Narayanan RT, Bergado-Acosta JR, Stork O, Seidenbecher T, Pape HC. J Neurosci. 2009 Dec 16;29(50):15713-20.

GAD65と extinction の話です。

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GABA 性伝達が extinction に重要な役割を担っていることはご存知のとおり。GABA の合成酵素である GAD には GAD67 と GAD65 の2つのアイソフォームがある。GAD67 は代謝性の GABA 合成を担っており、一方でGAD65 はハイレベルの GABA が必要なときに素早く活性化される。この GAD65 のノックアウトマウスでは cued fear conditioning で neutral な刺激に対し恐怖の generalization が見られ、neutral な刺激でも CS でも海馬と扁桃体でシータ波の同期が見られる。
筆者らは GAD65 欠損が extinction 中の神経活動に影響を与えるのではないかと仮説を立て、GAD65 ノックアウトマウスのLA, CA1, PFC で extinction 中の local field potentials (LFPs) を測定した。
結果としては、
ノックアウトマウスでは cued fear の extinction に障害が見られたが、contextual fear の extinction は WT と変わらなかった。ノックアウトマウスにおけるcued fear の extinction の障害は弱いショックによる条件付けでも見られた。また、neutral な音に対しても extinction 初期に freezing が見られた (generalization)。 (Fig.1)
・LAとCA1, CA1とPFC, LAとPFCについて freezing 中のシータ波の相互相関をとると、ノックアウトマウスはWTに比べてLAとCA1における相関が extinction training 後も高かった。WTでは extinction に伴い相関が減少した。(Fig.3)
・neutral な刺激について、freezing 中のノックアウトマウスのLAとCA1, CA1とPFC, LAとPFCのシータ波の相互相関は WT に比べて高かった。(Fig.5)
以上のことから、 GAD65 は cued fear の extinction に重要な役割を果たすが contextual fearの extinction にはノックアウトしても影響しないこと、GAD65 ノックアウトマウスの cued fear の extinction 障害にはLAとCA1のシータ波の同期が関わっていることが示された。また、Fig.5からはノックアウトマウスの fear の generalization にはLA-CA1-PFCの回路の同期が関わっていることが示された。

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うっかりシータ波とか出てくる論文を選んでしまったのでなおさら読みづらかったです…。タイトルにだまされました。行動試験で contextual fear や弱い条件付けなどをしているのに、シータ波の相関を見ていないのがちょっと気になりました。せっかくなので contextual fear の extinction では WT とノックアウトマウスでシータ波の同期に差がないとか言えてればよかったのにと思いました。GAD65 のノックアウトが cued fear の extinction には関わるが contextual fear の extinction には影響しないということ自体は面白いと思いました。GAD67はどうなるのかなと思ったのですが、GAD67のノックアウトマウスは残念ながら致死のようです。

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