c-Fos の遅れた海馬での発現が、LTM の貯蔵に特異的に関与する。
みなさんこんにちは。
新年１回目のまはろぐ、ラスト３回目となったまはろぐ、始めましょう。
実はこれを書いてるのは12月です。
クリオに実験の行く手を阻まれ、時間があいてしまったので、書いてみてます。
ラボに人いないです。へこみんです。。。
今回紹介する論文はこちら。
これまで、LTM の長期にわたる記憶痕跡のシナプス変化は明らかになっていません。LTM の貯蔵には背側海馬の BDNF や他のタンパク合成が必要である (形成には必要ない) ことは、御存じの通り。
またInhibitory avoidance (IA) は海馬依存の記憶タスクであり、IA のトレーニング後、c-fos タンパク量が増加することも知られています。これはつまり、転写が記憶の貯蔵過程の一因となっている可能性があり、筆者はこれについて検討しています。
今回の研究目的は２つ。
・転写過程が LTM の貯蔵過程に関与するのかどうか
・背側海馬の c-Fos 発現がその過程と機能的に関連があるのかどうか
そして得られた結果はこんな感じです。
・IA の LTM は海馬 c-Fos の遅れた発現と関連がある。
・この c-Fos の発現は、IA の LTM の長期貯蔵に不可欠である。
・トレーニング 24 h 後の背側海馬の転写阻害は、LTM の貯蔵を阻害する (形成はそうではない)。
少し詳細に説明しますと…
RNA ポリメラーゼ阻害薬 amanitin を、IA トレーニング 24 h 後に CA1 に投与すると、7 d 後の記憶が阻害された。2 d はコントロール群と同程度の latency を示した。
→海馬における mRNA 合成の late wave は、IA 記憶の維持には必要だが、形成にはそうではない (Fig. 1)。
トレーニング後の c-Fos 発現は 1 h 後と 18-24 h 後の 2 相に分かれてピークが来た。その時点での c-Fos 発現量を、強度の異なる 2 種類の IA を行い定量したところ、1 h 後は弱い条件づけも強い条件づけも c-Fos の発現量が上昇したが、24 h 後に上昇がみられたのは強い条件づけをおこなった群のみだった。
→2 相目の c-Fos 発現は、LTM 貯蔵の維持に特異的にリンクしている (Fig. 2)。
c-Fos の翻訳を特異的に阻害する antisense oligonucleotide (ASO) を CA1 に局所投与した。トレーニング前投与では、2 d 後、7 d 後共に latency が減少した。トレーニング 12 h 後に投与すると、7 d 後、14 d 後に latency が阻害された。トレーニング 8, 18, 24 h 後の投与では効果は見られなかった。
→2 相目の c-Fos 発現は、IA 記憶の維持には必要だが、形成にはそうではない (Fig. 3)。
さらに c-Fos 投与が行動量や不安様行動、探索行動には影響は示さないことを Fig. 4 で示しています。Fig. 5 では海馬でのアドレナリン受容体活性化が c-Fos 発現を上昇させることを利用し、c-Fos 発現を外因的に誘導することで latency を増加させています。記憶の維持は c-Fos の新規合成に依存していることを改めて示し、Fig. 1-3 の結果を支持する結果ですね。
以上の結果から、遅れた転写が海馬依存の記憶痕跡の維持に必要であると考えられます。これは、記憶を維持するために腹側海馬でおこる学習後の固定様イベントの反復性回路を支持するものであると筆者たちは主張しています。
まずc-Fosの段階的な転写に意味を見出したことに、興味をそそられました。が、ここまでタイムコースが厳格なのかと、少々疑いたくなる面もあり、実験条件がより厳しくなるであろうことに、少々頭が痛くなる面もあり、、、
あと、修士論文を控えている身としては、英語と日本語の言葉の使い方が難しかったです。
1月に追記。
隊長が褒めていた、HAREさんのブログを参考に書き直しました。どうですか。
まはるか
