報酬が得られる事象はより再生される

私です
今回私が紹介する論文は先月のneuron 誌に掲載されたRewarded Outcomes Enhance Reactivation of Experience in the Hippocampushttp://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleListURL&_method=list&_ArticleListID=1157482333&_sort=r&view=c&_acct=C000010979&_version=1&_urlVersion=0&_userid=136130&md5=7eed1c03e40bd997f7fcf5161f83dd84です

学習時におけるReactivation とreward に関する研究です。
これまで多くの研究で、課題後に神経活動の繰り返し(reactivation) が生じていることが示されました。Reactivation は記憶形成に関与するのではないかと考えてられています。
我々は生じたすべてのことを覚えているのではなく、よく覚えていることとあまりよく覚えていないことがあります。それを規定する重要な因子が報酬 (reward)です。筆者らは、reactivation が学習に関与するのなら、reward が伴う出来事の時により顕著なreactivation が生じているのではないかと仮説を設けて検証しました。

筆者らは、学習課題としてsequencing switching task を用いました。この課題では、ABCDEF という六本の横並びの連なったコラムを決められた順序で行き来することが求められます。学習する順序は二種類でS1: C-D-C-B-C とS2: D-E-D-C-D です。正しい順序をラットが選択した際は、コラムの端にあるwell で餌 (reward)がもらえます。Reactivation はこのwell にいる無動時のSWR (sharp wave ripple) 時に検出しています。(これまでの研究で海馬においてはSWR 時にreactivation が生じやすいことが示されています。今回の実験では解析脳部位は海馬のCA3 野です。)

筆者らの仮説によると、報酬のあるコラムに入った時の神経活動は報酬のないカラムに入った時より、よくreactivation されると予測できます。
その予測通り、報酬が得られたカラムでのSWR の発生頻度・SWR 中の発火率・細胞ペアのreactivationは報酬が得られなかったカラムに比べて大きい値を示しました。
また順序をS1からS2に入れ替えた時は新たな順序S2 を学ばなければならないので、慣れたS1 の時に報酬が得られたカラムの神経活動よりも新たにS2 を学び始めた時の報酬が得られたカラムの神経活動がよりreactivation されるとも予測できます。
実際に、S2 を新たに学び始めた時のSWR の発生頻度・SWR 中の発火率はなれたS1 を行っているときに比べて高い値を示しました。

課題もシンプルで、結果もクリアで筆者の仮説をよく支持していると思います。Reactivation と学習速度の間に正の相関があればなおよいと思いました。
私の研究では別の情動としてfear に注目してreactivation と記憶形成の関係性を調べています。筆者らの研究と合わせて、reactivation はgeneralな記憶のメカニズムなのかもしれないと思いました。
                          私でした