L-VDCCはLAのプレシナプス性LTPを調節している

BRIEF COMMUNICATION ですが、今回紹介するのはこちら。
L-type voltage-dependent Ca(2+) channels mediate expression of presynaptic LTP in amygdala. Fourcaudot E, Gambino F, Casassus G, Poulain B, Humeau Y, Lüthi A. Nat Neurosci. 2009 Aug 2. [Epub ahead of print]

LA におけるプレシナプス性 LTP は L-type voltage-dependent Ca2+ channel (L-VDCC) によって調節されているというお話です。

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グルタミン酸シナプスの LTP については、ポストシナプスグルタミン酸への持続的な反応性増強と、プレシナプスグルタミン酸放出確率増加の2つのメカニズムが知られている。ポストシナプス性 LTP 発現の分子メカニズムについては多くの知見が得られているが、プレシナプス性LTP発現の分子メカニズムについての知見は非常に少ない。多くの神経伝達がCa流入に依存することから、プレシナプスのCa流入グルタミン酸放出確率増加につながると考えられ、筆者らはプレシナプスのCa流入を調整する VDCC に着目して、皮質-LA経路のプレシナプス性LTPにおけるVDCCの役割を調べた。


方法はマウスの脳スライスを用いたパッチクランプ。LTPの誘導にはフォルスコリン(以下FSKと表記。アデニル酸シクラーゼ活性化剤。プレシナプス性LTPを誘導する。)を使用。
はじめに VDCC の各サブタイプ(L-, P/Q-, N-, R-type)が皮質-LA シナプスグルタミン酸放出においてどのように寄与しているかを調べている。各サブタイプ特異的なアンタゴニストを処置すると、ベースラインのグルタミン酸放出にはP/Q-typeとN-typeの寄与が大きいが、FSKによるLTPに対してはL-typeの寄与が大きいことがわかる(Figure.1)。
LTP誘導後のL-VDCCの阻害でもLTPは阻害される(Figure.2a)。FSKを処置し20Hzの刺激を与えるとグルタミン酸が枯渇してEPSC amplitudeが小さくなる(短期可塑性)が、L-VDCC阻害により短期可塑性も阻害され、L-VDCCは直接グルタミン酸放出に関わっていることがわかる(Figure.2c)。これらのことからL-VDCCは皮質-LAのプレシナプス性LTPの持続的な発現に関わっていることが示唆される。
また、BayK 8644(L-VDCCの正のアロステリックモデュレーター)を処置するとシナプス伝達が増強されること、paired-pulse ratioが低下することからも、プレシナプス性のメカニズムであると考えられる(Supplementary Figure.3)。


本実験の結果は、L-VDCCが恐怖条件付けの長期記憶に関わるというin vivoの知見とも一致し、長期記憶の形成におけるL-VDCC依存のプレシナプス性LTPの役割を示唆したといえる。

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先日記憶の分子メカニズムのレビューを行ったので、その流れでL-VDCCをとりあげてみました。レビューの図ではポストシナプスに焦点を当てていましたが、参照した論文の実験はシナプスに焦点を当てた実験を行っているわけではないので、プレシナプス性のメカニズムによる部分もあるのだろうと感じました。L-VDCCの記憶の固定化への寄与はプレが関わっているのでしょう。
割と軽い気持ちで電気生理の論文に取り組んでみましたが、まだまだ電気生理に弱いことを痛感した次第です・・・。

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