行動性のストレスが代謝ストレスを介し、Tg2576マウスの脳におけるプラークの病変形成を加速させる。

Behavioral stress accelerates plaque pathogenesis in the brain of Tg2576 mice via generation of metabolic oxidative stress.

Kang-Woo Lee*, Jung-Bin Kim†, Ji-Seon Seo*, Tae-Kyung Kim*, Joo-Young Im*, In-Sun Baek*, Kyoung-Shim Kim*, Ja-Kyeong Lee† and Pyung-Lim Han*

Journal of Neurochemistry Volume 108 Issue 1, Pages 165-175

If you are interested in this paper, just click the link: http://www3.interscience.wiley.com/journal/121502630/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0

今回紹介する論文はストレスがアルツハイマー病との関係の論文である。

アルツハイマー病(AD)は進行性の神経疾患である。ADは遺伝子と非遺伝子の二つの因子に分けられる。ほとんどのADは恐らく非遺伝子の環境因子で誘発されると考えられる。

臨床研究では、AD患者の血中濃度にストレスホルモンが増加するが、ADの病態生理に関するストレスの生理的な重要性はまだ明らかになっていない。

著者らは明らかにしたことは、
①、ADのモデルマウス(Tg2576)を自由行動できなく、換気ができるチューブに毎日2時間、連続16日間で拘束される。このような拘束ストレスにより、ADモデルマウスにおけるβ-amyloid (Aβ)プラーク沈着、Aβ(1-42)、Aβ(1-40)が増加する。(Fig 1,2)

②、コルチコステロンの量は、WT群においても、Tg群においても、拘束ストレスで、増加する(Fig 3)。
視床下部下垂体-副腎(HPA)軸椎に副腎皮質刺激ホルモン遊離因子受容体のアンタゴニストであるNBI 27914を前投与で、ストレスによる効果はリバースされた(Fig 3,4)。

③、初代培養大脳皮質神経細胞を用い、コルチコステロンの処置により、MMP-2(Aβを分解する酵素)が減少する(Fig 5)。
コルチコステロンの処置により、代謝酸化ストレスが増加する。脂質過酸化(マロンジアルデヒドMDA)および、カルボニルの量が増加する(Fig 6a.b)。

④、Tg2576マウスを拘束ストレスさせることによるMDAの増加が、NBI 27914で抑制された(Fig 6,c)。

個人的な意見:
1、ストレスによるAβプラークの沈着が記憶、学習にどんな影響を与えるのか興味を湧いた。電気生理学手法や、モリスの水迷路試験をやってみたら、面白いかもしれないと考えている。NBI27914の効果がストレスによる記憶、学習能力の減弱を回復させれば、AD治療薬開発のストラテジーになる可能性があるかもしれないと考える。

2、本論文では、ストレスが代謝酸化ストレスを増加し、Aβを分解するMMP-2をダンレギュレーションさせる流れだと考えられたが、BACE1やɤセクレターゼの変化はどうなるかをもっと調べる余地もあるかもしれないと考える。(Fig 5a、Fig S3)に、ストレスによって、BACE1の量が増加していると見られているが、有意ではなかった。)

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