CeA の恐怖記憶固定過程には CRF が重要である。

今回は短くいくことが目標です。

The central nucleus of the amygdala and corticotropin-releasing factor: insights into contextual fear memory.
Pitts MW, Todorovic C, Blank T, Takahashi LK.
J Neurosci. 2009 Jun 3;29(22):7379-88.Click here to read

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez

私の前回の訓練時にお話しましたが、CeA は BLA にインプットされた恐怖条件づけの情報を、アウトプットする役目があります。近年の研究は、CeA が恐怖記憶の consolidation にも関与していることを示唆しています。これには、corticotropin releasing factor (CRF) が関与していることが言われており、CeA のlateral 側 (CeAl) には CRF 免疫反応性の細胞や線維が高密度に存在することが知られています。しかしながら、文脈的恐怖条件付けについての CeA CRF の関与については、未だにわからないことが多いのが現状です。
そこで筆者らは、fiber-sparing lesion や様々な薬物 (試薬) を利用した lesion 実験を行い、文脈的恐怖における CeA の役割を評価しようとしました。

文脈的恐怖条件づけ前にイポテン酸、ムッシモール、CRF ASO を投与されたラットは、トレーニング中には変化はありませんでした (acquisition には影響はない) が、48 h 後のテスト時には freezing が減少していました。
(ムッシモールや CRF ASO による CeA の不活性化は、freezing 行動の発現に影響しないことは確認済)。
これらのことから、retention test での freezing の減少は、恐怖発現というより consolidation の阻害によるものだと考えられます。CeA は文脈的恐怖記憶の consolidation に関与し、CeA CRF がその役割を担っていることがわかりました。
(もちろんこれだけではないでしょうが)。

すごいさっぱりした実験計画です。単純なものほど、詳細を突き詰める必要性を感じました。
lesion 実験はただ lesion するのではダメです。どこまで specific にいけるかが勝負なのですね。前に私 (≠まはるか) が E4 訓練で紹介し、私 (=まはるか) が review で紹介した ITC を lesion した nature の論文もそうですが。また lesion の手法にもいろいろですし、1つの事象についても多方面から考えないといけないと反省しました。
この論文は直接ホルモンの影響を見たわけじゃないですし、まだまだ実験の余地があると感じました。

まはるか