条件づけされた音への鋭敏性に聴覚皮質の活動が関与する

遅れてしまって申し訳ありませんでした。例年よりも随分と早く梅雨も明け、厳しい季節が巡ってきましたね。太陽とクーラーの攻撃にお体を壊されませんよう、皆様お気を付け下さい。因みに私は既に若干敗北気味です。本日紹介する論文はこちら。
Bidirectional effects of aversive learning on perceptual acuity are mediated by the sensory cortex.
Nat Neurosci. 2013 Jun 30. doi: 10.1038/nn.3443.

激情の伴った経験は感覚に対する応答を高めたり、また逆に減弱させたりすることが知られています(過剰反応とgeneralization)。このバランスがどのように調節されているのかについて、筆者らは異なる音を組み合わせた音恐怖条件づけを用いて検討しています。
今回は、CS+として15kHz、CS-として7.5kHz(=coarse)、12.75kHz(=fine)の音を用いています。
・テスト時のCS+に対する応答特異性は、fine、coarse、normal の順に高い(= generalization の起きにくさは fine>coarse>normal, Fig.1a)。
・normal, coarse による条件づけはCS+に対する判別能を落とす一方、fine による条件づけは判別能を上昇させる(Fig.1b)。
・fine 条件づけによる判別能の上昇には個体差があり、聞きわけを殆どできない個体もいる。
・テスト時にムシモールを聴覚皮質に局所投与しておくと、normal, coarse による条件づけはCS+に対する判別能の低下、およびfine での判別能の上昇が消失する。これは、24時間後に薬物投与なしでテストを行った際には見られない(=可逆的、Fig.3)。


これらより筆者らは、条件づけによる感覚の鋭敏化、またはgeneralization は条件づけ時にどれだけ「特異的」な経験をしたかによること、またそれらの識別には(扁桃体だけでなく)聴覚皮質も重要であることを明らかとしました。
恐怖記憶に関連する情報が扁桃体よりも上流で既に振り分けられているとは、面白いと思います。

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