CeLの細胞種特異的な記憶の貯蔵

最近いろんな部屋を使っているのですが、二光子の部屋との行き来が寒いです。209に行くのも寒いです。早く本格的に春になってほしいものです。
今回ご紹介するのはこちら。CeAのお話です。
Experience-dependent modification of a central amygdala fear circuit. Li H, Penzo MA, Taniguchi H, Kopec CD, Huang ZJ, Li B. Nat Neurosci. 2013 Jan 27


扁桃体中心核(CeA)は、従来扁桃体からその下流へ情報を渡すだけの存在と考えられていましたが、近年CeAも恐怖記憶に積極的に関わっていることが明らかとなってきました。筆者らは、電気生理、オプトジェネティクスなどを駆使し、CeLの細胞種特異的な可塑性および恐怖記憶への寄与を明らかにしました。

急性スライスでBLAを刺激し、CeLのソマトスタチン(SOM)陽性細胞と陰性細胞のEPSCを記録。コントロール群ではSOM陽性細胞のほうがAMPA-EPSCのamplitudeが小さいのですが、条件づけ3時間後、24時間後では陽性細胞のほうが有意に大きくなっています。NMDA-EPSCは、コントロール群ではSOM陽性細胞のほうがamplitudeが小さく、条件づけ3時間後、24時間後には差がなくなります(Fig1a-c)。また、条件づけによってmEPSC頻度がSOM陽性細胞では上昇、陰性細胞では減少します(Fig1d-e)。

続いてChR2をLAに発現させ、LAに光照射、CeLから記録。条件づけによりPPRがSOM陰性細胞は上昇、SOM陽性細胞は減少し、Fig1で見られた可塑性はプレシナプス性のものであることが示唆されます(Fig2)。もうひとつの入力候補であるauditory thalamusからの入力はCeLで興奮性シナプス伝達を引き起こしません(Fig3)。

SOM陽性細胞を抑制すると、条件づけによるmEPSCの変化がなくなります。Freezing timeも低下します(Fig4)。CTbで投射を可視化するとこれらSOM陽性細胞の大部分はCeMに投射していませんでした(Fig5)。CeLのSOM陽性細胞にChR2を発現させ、光照射。CeLニューロンではIPSCが見られますが、CeMで記録をとると多くのニューロン、特にPAGに投射するCeMニューロンでIPSCが見られません(Fig6)。SOM陽性細胞はCeLニューロンを抑制しており、CeMニューロンは抑制していないと言えます。

SOM陽性細胞にChR2を発現させて光照射すると、naiveマウスでfreezingが誘導されます。逆にArchを発現させて想起時にSOM陽性細胞を抑制すると、freezingが見られなくなります(Fig7)。CeLのSOM陽性細胞活性化は恐怖の発現に必要十分であるとわかります。


CeLの可塑性による記憶の貯蔵、およびSOM陽性細胞を中心とした抑制性回路による記憶の読み出し様式が明らかとなりました。自分のBLA研究でもこんな感じで抑制かけるところまでできればいいんだけどな。


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