ChR2 を長期に発現させると神経回路が壊れる
遅くなりまして申し訳ありません。遅れた分だけ地面に頭をのめり込ませて土下座してきます。今回は、光受容体を用いた実験での弊害を観察した論文を。
Long-term channelrhodopsin-2 (ChR2) expression can induce abnormal axonal morphology and targeting in cerebral cortex.
Toshio Miyashita, Yu R. Shao, Jason Chung, Olivia Pourzia and Daniel E. Feldman. Front. Neural Circuits, 31 January 2013 | doi: 10.3389
ChR2を用いた光遺伝学的手法は今日では各種神経基盤の研究に欠かせないツールとなっています。筆者らはこれらの高レベルな、又は長期的な発現が神経回路にどのように影響するかを in utero エレクトロポレーション法 (IUE) とウイルス感染によって調べました。ChR2-GFP/EYFP 導入位置はいずれもS1の2/3層の細胞です。
― IUE (E18 で導入)
・P33の段階から徐々に細胞体での蛍光が失われ、代わりに軸索上で異常な蛍光斑点(puncta)が見られるようになる。GFP のみを発現させた場合にはP100の段階でも異常構造は見られない (Fig.1)。
・シリンダー状、がく状の斑点があり、前者の一部はapical dendrites と、後者はNeuN陽性細胞体を覆うように存在している (Fig.3, 5, 6)。このような投射は通常は見られない。
・特別な光刺激を行わない(通常の明暗サイクルで飼育)状態でもこの異常構造が見られる。
― virus injection (P30-40 で導入)
・CAGプロモーター(比較的弱いプロモーター)を用いてAAVで導入しても軸索の形態異常は見られない一方、αCaMKII プロモーター(強い) を用いると導入後80日で小疱 (bulb) 状の軸索異常が見られる (Fig.7)。
導入後の日数で比較すると異常構造の数はIUE > virus injection なので、筆者らは発現率が高いほど、また年齢が進むほど異常構造が増えると結論付けています。こういった「副作用」には細心の注意を払って実験、観察していく必要がありますね。怖いです。
Light.