淡蒼球外節のCRFR1の役割

最近コルチコステロン組の仲間入りをはたしました。と、言うわけで今回は久々に記憶・学習系ではない論文をお送りいたします。

An anxiolytic role for CRF receptor type 1 in the globus pallidus. Sztainberg Y, Kuperman Y, Justice N, Chen A. J Neurosci. 2011 Nov 30;31(48):17416-24.


Corticotropin-releasing factor(CRF)と言えばうつや不安に関わることが知られています。その受容体であるCRF受容体type1(CRFR1)は、うつや不安に関わるような部位から感覚刺激や運動機能に関わる部位まで、脳に広く分布します。
淡蒼球外節(GPe)は運動に関わる部位ですが、情動行動にも関わることが示唆されています。しかし、GPeのCRFR1の機能については詳しく知られていません。筆者たちは、ノックダウン実験を中心にGPeのCRFR1の役割に迫りました。

初めに、ストレスがGPeのCRFR1にどのような影響を与えるか調べています。マウスに拘束ストレスをかけたところ、CRFR1のmRNA発現レベルがコントロールより低下しました。また、免染でGPeにおけるCRFR1のリガンドが(ウロコルチンではなく)CRFであることを示しています(Fig1)。

続いて、CRFR1のsiRNAを発現するレンチウイルスをGPeに投与してCRFR1をノックダウンし、不安様行動を調べました。明暗箱、オープンフィールド、高架式十字迷路のいずれの試験においても、ノックダウンにより不安様行動の上昇が見られました(ただし、高架式十字迷路は統計的に有意ではありませんでした)(Fig3)。

CRFR1選択的アンタゴニストNBI30775をGPeに投与した場合も、オープンフィールド、ガラス玉覆い隠し試験で不安様行動の上昇が見られました(オープンフィールドの結果はあまりきれいではないですが)(Fig4)。

GPeのCRFはCRFR1を介してエンケファリンを放出させることが知られています。そこで、ノックダウンマウスのGPeにおけるエンケファリン発現を調べたところ、コントロールに比べ発現が減少していました(Fig5)。GPeは線条体からエンケファリンニューロンの投射を受け、GPeニューロンの1/3ほどはPVネガティブで線条体に投射し返しています。GPeにおけるCRFR1とPVの共染色をしたところ、30.5%がCRFR1ポジティブかつPVネガティブでした(Fig6)。線条体に投射し、エンケファリン放出に影響するCRFR1ニューロン群が存在することが示唆されます(Fig6Hが模式図)。


行動試験の結果があまりきれいでないこと、エンケファリンの話が詰め切れていない印象を受けることが気になりましたが、CRFR1のノックダウンにより不安様行動が上昇するというのは、従来のCRFの役割から予想される結果とは逆で興味深いです。直接示したわけではないですが、GPeにおけるCRF-CRFR1システムが抗不安作用を持つことが示唆されます。ストレスは奥が深いですね。

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