immediate extinction deficitはmPFCが活性化されないことに起因する
初めての文献紹介に気を取られ、ブログの締め切りを過ぎてしまってすみません(+_+)今回紹介する論文は、
immediate extinction deficit(IED)は、恐怖記憶の獲得からextinction trainingまでの時間が短い時、長期にわたるextinction memoryが形成されないという現象です。獲得時の恐怖の強さなどIEDの原因としていくつかの報告がありますが、神経レベルでの考察はなされてきませんでした。mPFCは、extinction memoryの形成や維持に関わっていると言われています。本論文では、音恐怖条件付け後のextinction trainingにおけるmPFCの活性をc-fosを指標に調べることでIEDの原因を考察しています。
筆者らは、mPFCのinfralimbic cortex(IL)及びprelimbic cortex(PL)におけるc-Fosの発現を見ることで、acquisitionからextinction trainingまでの時間が十分長い場合(ここでは24時間,delayed extinction, D-EXT)extinction trainingによってそれらの部位の神経活動が増加するのに対し、間隔が短いと(15分,immediate extinction, I-EXT)増加しないことを明らかにしました。すなわち、IEDはmPFCの神経活性が上がらないことが原因であることを示唆しています。
もしそうであるならば、extinction training中に音(CS)と共にILを人工的に電気刺激(0.2 ms, 100 Hz, 100uAのsquare pulseを300 s )することでIEDが抑制されるのではないかと考えられます。実際にこの実験を行うと、24時間後I-EXTでもD-EXTと同等にextinction memoryが保持されていることが明らかとなりました。
以上の結果から、acquisition後間もない頃にはmPFCの神経活性が上昇せず、IEDはそれが原因で起こることが明らかとなりました。
ILを刺激する実験で、音とほんの一瞬の刺激をペアさせただけでIEDがレスキューされるということは、一瞬の電気刺激の間でCS-noUSのextinction memoryを維持するような機構がスタートするということでしょうか。
郁享(←読みはそのまま「ふみたか」です。姓名判断でこれのほうが画数的にいいらしいのでプライベートでだけ使ってます)