強い音恐怖記憶は再固定化を起こさない

すっごく遅れてごめんなさい(・・;)HAREに先を越されたザッキーです。。。。。

今回紹介する文献は
Cellular and systems mechanisms of memory strength
as a constraint on auditory fear reconsolidation
Szu-Han Wang, Lucas de Oliveira Alvares & Karim Nader
Nat Neurosci. 2009 Jul;12(7):905-12. Epub 2009 Jun 21
です。

恐怖体験後、不安定な恐怖記憶は固定化されることで安定な記憶となり脳内に貯蔵されるが、この安定な記憶は想起することで再び不安定な状態となり、安定な状態になるには再固定化が必要である。この再固定化は素過程であると考えられるが、ある実験条件下においては再固定化が起こらない。このよう条件を「再固定化の境界条件」と呼ぶ。

本論文は強い音恐怖記憶を境界条件とした時の再固定化の阻害メカニズムについて言及したものである。


以下は、大切と思うFigureを抜粋してみました☆

Fig.1
弱い恐怖記憶(1 pairing)はanisomycinにより再固定化が阻害されるが、強い恐怖記憶(10 pairing)はanisomycinには影響されなかった。また、1 pairng + 9 foot shockによる恐怖記憶はanisomycinにより再固定化が阻害された!!ことから再固定化の阻害にはより強い連合性が関与している。
Fig.3
強い恐怖記憶も時間が経てば再固定化を経る。(「強い恐怖記憶は再固定化を起こさない」と題したんですけど、語弊があったかも。)この境界条件は一過性で、本論文では条件付けとreactivation間が30、60 日経てば再固定化が起こるという結果になっています。
Fig.4
強い恐怖条件付け前に背側海馬をlesionした群では再固定化が起こる。背側海馬は強い恐怖記憶の再固定化を阻害していることが示唆される。

Fig.5,6
強い恐怖条件付け後、LBAにおけるNR2Bの発現が低下するが、NR1の発現は変化しない。また、条件付け前に背側海馬をlesionした群でもNR2Bの発現は変化なかった。

以上をまとめると
強い恐怖条件付けを用いた境界条件による恐怖記憶の再固定化の抑制は
1) 一過性で
2) 海馬および扁桃体が関与し
3) LBAのNR2B NMDA受容体サブユニットの発現抑制
を介したメカニズムで起こる。


ちょっと疑問
・Fig.1で1 pairigと10 pairingのfreezing (%)が同レベルとかあり得るんかなぁ??本論文ではUSとして強度1.5 mA,1 sを用いているけれど頭打ちしてしまっているんとちゃうんかなぁ。。。。。
・あと、Fig.5 aで1 pairing + 9 foot shock 群で最もNR2Bの発現が低下していたのは何で??Fig.1 cでこの群はanisomycin投与により1 pairing 群と同様なfreezing (%)の低下が見れたからstrong frear→NR2B発現低下ならば、1 pairing + 9 foot shock 群のNR2B発現も1 pairing 群同様変化しないのかと予想したのですが。。。。。