認知や注意といったことに関与するaRSCが記憶にも関与しているという論文です。

Learn Mem. 2013 Mar 15;20(4):170-3. doi: 10.1101/lm.030080.112.
Functional integrity of the retrosplenial cortex is essential for rapid consolidation and recall of fear memory.
Katche C, Dorman G, Slipczuk L, Cammarota M, Medina JH.

aRSCと呼ばれる領域は、注意や認知に重要な領域であるとされており、一方で、この領域を不活性化させると、海馬除去と同様の結果が得られるそうで(Cooper and Mizumori 2001)、記憶との関連があるのではないかと注目されている領域です。

結果
行動タスクはすべてIAです。
 条件づけ15分前に翻訳阻害薬であるエメチンをaRSCに投与すると、2,7日後の記憶がともに阻害される。(アニソマイシンでも同様の結果が得られる。)
 
 条件づけ9時間後に投与すると、どちらの記憶も阻害されない。
 
 転写阻害薬であるアマニチンを投与しても、翻訳阻害薬投与群と同様の結果となる。
 
 条件づけ1,7,21日後にテストをする15分前にムシモールを投与しところ、recent, remote memoryともに阻害された。そして、各テストの1日前に投与した場合は変化しないことが明らか
 となった。

 この論文の面白い点としては、記憶は時間がたつと貯蔵場所が皮質へと移行することが知られていますが、今回注目したaRSCではremote memory だけではなくrecent memoryの想起も皮質が関与しているのではないかという点が面白いと思いました。また、学習9時間後にタンパク質阻害をしても記憶の阻害が生じない点も面白いと思いました。

岩田浩一