CA3のNpas4がCFCにおけるIEG転写を制御している

18日に文献紹介、20日にレビュー、27日にシンポジウムでの口頭発表(英語)と、イベント盛りだくさんのanです。何故イベントはこうも重なるのでしょう。16日に更新する余裕はないと思うので今のうちにレビューの息抜き兼ねて更新します。今回ご紹介するのはこちら。
Npas4 regulates a transcriptional program in CA3 required for contextual memory formation. Ramamoorthi K, Fropf R, Belfort GM, Fitzmaurice HL, McKinney RM, Neve RL, Otto T, Lin Y. Science. 2011 Dec 23;334(6063):1669-75.

環境記憶の素早いencodingにはCA3が必要です。しかし、CA3特異的なその分子経路は明らかとなっていません。筆者らは活動依存性転写因子Npas4(neuronal PAS domain protein4)に着目し、環境記憶形成におけるその役割を調べました。


まずNpas4が神経活動や学習によって誘導されることをin vitro, in vivoで確かめています。マウスの海馬培養細胞にKClを適用するとNpas4のmRNAとタンパク質が発現。また、CFCによっても背側海馬でNpas4のmRNAが発現。Context提示だけでもNpas4が発現、immediate shockでは発現せず、この遺伝子が環境学習に関わることが示唆されます(Fig1)。

Npas4の必要性を確認。Npas4KOマウスではCFCが短期記憶、長期記憶共に阻害されます。AFCは阻害されないので、この結果は扁桃体によるものではないと言えます(Fig2)。

さらにCA3のNpas4が必要であることを確認。CFCによってCA3でNpas4が誘導されます(CA1では誘導されない)。Creリコンビナーゼを利用してCA3選択的にNpas4の発現を抑えるとCFCが阻害されます。CA1で抑制しても記憶は阻害されません(Fig3)。

Npas4のピークは他のIEGより早いので、Npas4が他のIEGの発現を調節しているかを検証。Npas4を抑えるとc-Fos, Zif268, Arcの発現が抑制されます。また、クロマチン免疫沈降でNpas4がBDNFのプロモーターやc-Fosのエンハンサーに結合していることを確認しています(Fig4)。そこでNpas4がRNAポリメラーゼIIのリクルートに必要なのかを調べると、Npas4を抑えた場合BDNFのプロモーターやc-FosのエンハンサーへのRNAポリメラーゼIIの結合が阻害されました(Fig5)。

最後にレスキュー実験。Npas4KOマウスのCA3にNpas4を発現させると記憶の阻害がレスキューされます。CA1に発現させてもレスキューされません(Fig6)。


CA3のNpas4がCFCに必要十分であることを示していますが、CFCで扁桃体や皮質でもNpas4が発現しています(FigS3)。扁桃体や皮質のNpas4は何をしているのか気になるところです。同じように他のIEGを制御したりしているのでしょうか?これらの部位でも選択的に発現を落としてほしかったです。
また、筆者らも述べていますが、Npas4のIEG制御は遅い段階の発現についてなのでしょう。Arcが発現するレベルの速さで翻訳が行われるとは考えにくいです。1st waveには以前紹介したポリメラーゼの留まりがNpas4無関係に効いているのではないでしょうか。
最近扁桃体メインの論文ばかり読んでいるので、久しぶりに海馬メインの論文なんか読むと新鮮でいいですね。ちなみに18日の文献紹介では同じScienceのもう一方のFC論文を紹介します(Qooさんがブログで紹介してますが…)。また扁桃体ですね。

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